食物アレルギーとは…
ある特定の食べ物の成分でアレルギーを引き起こしてしまうことを食物アレルギーと呼びます。
症状は多岐にわたり、最も軽症な口腔内の違和感に始まり、顔面の腫れや赤み、もう少し重ければ全身の蕁麻疹、さらには嘔吐、下痢といった消化器症状、命に関わる重症なものとしては、咳、声がれ、呼吸困難などの呼吸器症状、顔色不良、血圧低下などの循環器症状等、様々です。
食物アレルギーと乳児アトピー性皮膚炎の関係
一部の研究は、特定の食物アレルギーがアトピー性皮膚炎の悪化に関連していることを示唆しています。
しかし、一方で多くの研究は、食物制限がアトピー性皮膚炎の治療に対して無効であることを示しています。これらの研究では、食物制限が症状の改善や予防に効果を持たないことが示されており、食物制限によるストレスや栄養不足が問題を悪化させる可能性があるとされています。
欧米の一部のガイドラインでは、アトピー性皮膚炎の乳児に対して一般的な食物制限を勧めていません。代わりに、適切な栄養バランスを保ちながら、アレルギーのリスクを最小限に抑えるための方法や、スキンケア、軟膏、保湿剤などの外的治療を重視することを推奨しています。
食物アレルギーの分類
即時型食物アレルギー
即時型食物アレルギーは、特定の食品に対する免疫グロブリンE（IgE）による即時反応が特徴です。免疫系が誤って特定の食品成分を「異物」と見なし、過剰に反応します。症状は摂取後すぐに現れ、蕁麻疹、かゆみ、呼吸困難、嘔吐、下痢、咳、くしゃみなどが一般的です。重度の場合、アナフィラキシーショックを引き起こす可能性もあります。
特殊型食物アレルギー
特殊型食物アレルギーは、免疫グロブリンE（IgE）によらない免疫反応が特徴です。特定の食品を摂取した後に、遅延型の症状が現れることがあります。一般的な特殊型食物アレルギーには、乳製品、小麦、大豆、魚、貝類などが含まれます。症状は消化器系の問題、皮膚の発疹、体の不調などが一般的です。
これらの食物アレルギーは、正確な診断と適切な管理が重要です。専門医の指導のもと、適切な対処法や食事管理が行われることが必要です。
乳児期で最も多い卵アレルギー
乳児期の食物アレルギーの中で一番多く、その割合は50～60%とされています。その次には牛乳、小麦が挙げられます。
卵アレルギーの主要なアレルゲンは卵白
卵アレルギーの正式名称は「鶏卵アレルギー」です。卵アレルギーの主要なアレルゲンは卵白に含まれるたんぱく質であり、卵黄はアレルギー症状の主因とはされていません。
しかし、一部の消化器症状アレルギーでは卵黄に含まれるたんぱく質がアレルゲンとして作用することが知られています。
なお、構造の似ているウズラの卵などにも注意が必要ですが、魚卵は交差抗原性がありません。
卵アレルギーと加熱処理
卵アレルギーの主要なアレルゲンであるオボムコイドは、加熱によってもアレルギー反応が引き起こされる可能性があります。
したがって、卵白を加熱処理しても完全にアレルゲンが除去されるわけではありません。
特に高温または長時間の加熱を行うと、アレルギー反応のリスクは低くなるとされています。
幼児の消化器症状と卵アレルギー
幼い子供は消化器がまだ発達しきれていないため、アレルギー物質が腸を透過しやすいです。特に白身のアレルゲンは直接吸収されるので、アレルギー反応が起こりやすいとされています。
卵による消化器症状は、年齢とともに改善され、アレルギー反応に悩まされなくなった方もいます。
具体的なアドバイスや治療方針については来院時にご相談ください。
予防のために大切なこと
ピーナッツと鶏卵は早期の離乳食投与でアレルギーになる確率が低くなることが示されています。すべての食品で確認されているわけではありませんが、イメージの悪い食品の摂取を遅らせることはお勧めできません。
卵の摂取は必ず20分加熱したゆで卵から
卵を食べて症状が出てしまった方の共通項は、加熱処理に空気が含まれていた食品が関連していることです。空気に面していた卵たんぱくは完全加熱できないと考えられます。
100℃のお湯に触れれば大やけどをしますが、100℃のサウナに入ってもやけどをしないことから理解いできると思います。
だし巻き卵はもちろんのこと、周りが茶色くなるほど炒った炒り卵も中は不完全過熱になりかねません。
食物アレルギーの診断と治療方針
一般的には血液検査でアレルギー抗体を調べることが多いのですが、イメージされるほど正確な検査とは言えません。
当院の経験でも、明らかなゴマの誤食 (まちがえて食べてしまうこと)で、3回のアナフィラキシー・ショックを起こした経歴がありながら血液検査ではゴマが陰性の患者様がいらしたり、小麦の検査がよく知られていますが、アレルギーの検査で強い陽性反応が出ているのに、小麦にアレルギー反応を示したことがなかったり、小麦が陰性にもかかわらず、小麦粘土に触れただけで呼吸困難を起こす患者様が居たりしますので、アレルギーを示す証明というよりは、傾向を掴む助けぐらいに考えるべきだと思います。
食物アレルゲンを、最も正確に評価する方法は、残念ながら原始的ではありますが、極々少量から食べてみる(チャレンジテスト)以外の方法はありません。
強いアレルギー症状の既往がある方は、大きな病院と連携していますので、まずはそこでチャレンジテストが施行できるよう御紹介いたします。
軽度の症状しか出たことがない方は、当院にてチャレンジテストを施行します。
食物アレルギーのお子様を持つご両親様へのメッセージ
最近15年間で食物アレルギーについての考え方が大きく進歩しました。それが早期離乳食の勧めです。
各国から様々な経口抗原についてのデータが揃ってきており、そのいずれもが、早期離乳食の方が、明らかに食物アレルギーが減ることを示しているのです。
言い伝えの医学では、「早期に食事制限をしないと、将来、ひどいアトピーになり、その先も一生、喘息で苦しめられますよ。」等の脅し文句が幅を聞かせてきたために、不必要な、つらい食事制限を強いられたにあげく、逆に食物アレルギーになっていた方が多いのではと想像されます。正確な食物アレルギーの診断が不可欠です。
