子どもの便秘と下痢・嘔吐

便秘について

便秘について子供は消化器の機能が未発達であり、便秘になりやすい傾向があります。便秘は、長期間便が出ないか十分な量の便がスムーズに排出できない状態を指します。大人の便秘と子供の便秘では、治療目的が大きく異なります。大人は便秘になると排便する努力をしますが、子供は排便という行為が痛みを伴う恐怖体験とインプットされてしまうと、便意があっても排便を先送りするようになり、一気に慢性便秘症へ移行してしまいます。
子供の便秘の治療目的は、本人が排便という行為が気持ち良く爽快なものであると、認識されるようになるまで根気強く続けることが大切です。
診察では、お子さまの健康状態を注意深く観察し、保護者の方の情報も丁寧に聞き取ります。個別に適切な治療法を提案しますので、お悩みの場合はいつでもお気軽にご相談ください。

以下の様な症状がありましたらご相談ください

お子さまの症状に合った治療を

眠る子供お子さまが便秘になっている場合は、生活習慣や食生活による便秘か、それとも他の疾患によって引き起こされているのかを見極めることが重要です。まだ年が幼いうちは、自身の症状について言葉にできないので、保護者の方がしっかり観察しましょう。お話をお伺いして、基礎疾患が隠れている可能性がある場合は、検査などを受けていただいてから治療法を提案します。また、生活習慣などによる場合は、食事や運動、睡眠、トイレトレーニングなどの方法などをアドバイスします。一人ひとりに合わせた治療方針を提案し、ご本人にも保護者の方にとっても負担が少ない治療法を選択します。

当院の治療方針

受付当院では、ご本人と保護者の方などが、健康的な便を適切な量だけ、スムーズに出せるようになったと思える状態を、最終目標だと捉えています。そのため、適切な排便習慣を身につけるためのトレーニングを受けていただく必要があります。トレーニングの内容は、お子さまの年齢、成長の度合い、体力などに合わせて組み立てていきます。
便秘の治療はすぐに終わるものではなく、長期間取り組んでいただく必要があります。
しかし、それだけではご本人が飽きてしまったり、保護者の方が焦ってしまったりするかと思われます。長期の治療に取り組めるよう、短期目標なども作り、少しずつそれを達成していくことでモチベーションを維持させていきます。
便秘は、心の状態によって大きく左右します。スムーズに排便ができるようになり「ちゃんと治療を続けて良かった」と思えるような治療を提供して参りますので、お子さまの便秘でお悩みでしたら、お気軽に当院へお越しください。

よくある質問

便秘になりやすい年代や時期などはありますか?

母乳から粉ミルクなどに変えた時、離乳食のデビューをした時、トイレトレーニングを始めた時、入園または入学のシーズンなど、生活環境に変化が起きた時に、便秘になりやすいとされています。

便秘の原因は何でしょうか?

便秘の原因は多岐にわたります。多くの場合は、特に原因となる疾患がない「機能性便秘」というタイプの便秘です。食生活などの生活習慣や、ストレスなどの精神的な要素によって起こることがあります。しかし腸や代謝、内分泌の異常、先天的障害、基礎疾患などで便秘になっている可能性も考えられます。通常の慢性便秘の治療を続けてもなかなか良くならない場合は、内分泌疾患や消化器の器質的疾患が隠れている可能性があるため、小児消化器専門医に紹介する場合もあります。

子どもの頃から便秘が続くと、大人になっても続いてしまうのでしょうか?

便秘症がある5歳以上の子どもの、4人に1人程度は大人になっても便秘症が続いているという報告があります。

基礎疾患のない機能性便秘の場合、どうやって治していきますか?

基本的にはトイレのトレーニング、生活習慣の改善を行います。また薬物療法も並行して行います。処方する薬は内服薬や坐薬、浣腸などです。慢性便秘症の場合、治療は短期間で終わらせずに、ゆっくりと時間をかけ、少しずつ治していきます。
処方される内服薬としては、酸化マグネシウムやモビコール、プルゼニド(下剤)、マルツエキス(便を柔らかくする効能を持つ)、ラキソベロンなどが挙げられます。また、坐薬はテレミンソフトや新レシカルボンなどを、浣腸はグリセリン浣腸液などを処方します。

下痢について

トイレをする子供健康な状態ですと、便の水分は大腸内で、ある程度吸収されます。その結果、固形成分によって、程よい硬さを維持したまま身体の外へ出されます。しかし何らかの原因で水分が多くなると、軟便や水様便が出てくるようになります。下痢は大人の場合、「軟便から水様便の状態が1日に3回以上ある状態」と定義されていますが、子どもの場合は腸の機能が発育しきれていません。そのため、回数が多くても腹痛などの症状を伴わない限り、特に心配する必要がないと判断されます。しかし、軟便や水様便が治らない、明らかに回数が多い場合は、下痢によって水分が失われ、脱水状態に陥る危険性もあります。
下痢が長引いている、便の色・形がいつもと異なっている、発熱や嘔吐、腹痛、体重減少などを伴っている場合は、要注意です。ご不明な点等ありましたら、気兼ねなくご相談ください。

下痢症状で考えられる病気

急性下痢症

急性下痢症とは、いきなり腹を下してしまう状態です。1週間以内で治まるケースが多く、細菌・ウイルス感染による感染性のものと、非感染性のものに分かれます。感染性のものは主に、アデノウイルスやノロウイルス、ロタウイルスなどのウイルスや、カンピロバクター、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、病原性大腸菌などの細菌によって起こります。一方、非感染性の下痢のほとんどは、食物アレルギーや薬の副作用によって起こるものだとされています。

慢性下痢症

下痢の状態が2週間以上続いている状態です。色々な原因が考えられるので、症状などをお伺いしてから検査を行い、原因を特定する必要があります。
小児期に多く見かけるのは二次性乳糖不耐症と軽症持続する細菌性の腸炎です。

ウイルス性胃腸炎

ウイルスによる者の場合、抗菌薬は効かないため、対症療法をメインに治す必要があります。治療の第一は食事制限です。食事療法は年齢によって異なります。これだけ医学が進歩しても低下した消化能力を元に戻すお薬は存在しません。症状が起きた初期の時点で、お腹を休めることが大切です。
脱水症状が起きてしまった場合には、軽度~中等度であれば、整腸剤などの処方と経口補水液での水分補給を行います。中等度~重度の脱水がみられる場合は、経口で水分補給するのが難しい場合には外来治療として点滴で水分を補給することもあります。

原因となるウイルスや細菌の種類

下痢の原因となるウイルス・細菌はたくさん存在します。代表的なものを下記にまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

ウイルス・細菌の名前 流行するシーズン 潜伏期間 便の特徴 下痢が続く期間
ロタウイルス 48~72時間 水様便で独特の臭いがします 2~10日間
ノロウイルス 24~48時間 水様便で独特の臭いがします 12~48時間
アデノウイルス 通年(冬より夏の方が多い) 7~8日 水様便 7~10日間
カンピロバクター 通年(初夏に多く見られる) 1~7日 水様便・粘血便 ~7日間
サルモネラ菌 春から夏 ~72時間 水様便・粘血便 ~7日間
腸管出血性大腸菌 通年 2~7日 血便 ~2週間

よくある質問

ウイルス性胃腸炎による下痢と診断された場合、母乳による授乳は控えた方がいいのでしょうか?

ウイルス性腸炎であれば、通常通り母乳はそのまま続けても問題ありません。

ウイルス性胃腸炎による下痢と診断された場合、人工乳は控えた方がいいのでしょうか?

母乳と同じように、人工乳もそのまま継続して問題ありません。昔はよく、「下痢になったら人工乳は薄めた方がいい」と言われていましたが、近年の研究では、「薄めても意味がない」と判明されています。人工乳に加えて、経口補水液などによる補給も行ってください。

中等度の脱水になると要注意と言われましたが、どういった症状が見られますか?

「ぐったりしている」「尿量がかなり減少している」「唾液の粘り気が増している」などの症状があり、かつ体重が5%以上減っている場合は、中等度の脱水が疑われます。速やかに受診してください。

消化の良い食事について教えてください。

同じ食材でも焼き料理と比べて、煮込み料理や蒸し料理の方が消化は良いとされています。具体的に言いますと、お粥や煮込みうどん、柔らかく煮た野菜、蒸し野菜、暖かい豆腐、半熟卵などがお勧めできます。動物性たんぱく質を摂る際は、鶏肉のささみや白身魚を選びましょう。また、リンゴのすり下ろしたもの、バナナ、牛乳、スポーツドリンクなども良いでしょう。ただし牛乳やスポーツドリンクなどを飲ませる際は、常温で飲ませましょう。

嘔吐について

嘔吐について嘔吐とは、胃が強く収縮することで、胃の内容物が体外へ吐き出てしまう状態です。子どもの場合は年齢によって、対処法や可能性のある疾患が異なります。年齢と発症時期、全身の健康状態などを考慮して、診断する必要があります。

嘔吐症状で考えられる病気

赤ちゃん

授乳期の赤ちゃんの場合は、まだ胃の入り口にある噴門(ふんもん)が成長しきれていないため、少しの刺激でも吐き戻してしまいます。授乳後にだらだら吐いたり、ゲップがうまくできずに吐いたりする場合は、特に問題ありません。
しかし「ぐったりしている」「顔色が悪い」「発熱を伴っている」などの場合は、代謝異常や消化管閉塞、ミルクに対するアレルギー、脳出血などが疑われるので、速やかに医療機関へ受診してください。

幼稚園児

激しい咳によって吐き戻してしまうケースもありますが、多くは感染性の急性胃腸炎によるものです。主な原因としてはノロウイルス、アデノウイルス、ロタウイルスなどのウイルスが挙げられます。
また、嘔吐する前に頭を打っていた場合は、頭部外傷や脳出血の可能性があるため要注意です。他にも髄膜炎や腸重積症、中耳炎、尿路感染症、鼠径ヘルニア嵌頓(かんとん)などが隠れている恐れもあります。
「ぐったりしている」「嘔吐物に血が混じっている」「顔色が悪い」「血便を伴っている」「おしっこが長時間出ていない」などの場合は、医療機関へ受診してください。

小学生

一番多くみられるのは、ウイルス性の急性胃腸炎です。また、2歳頃に発症し、10歳頃まで続く周期性嘔吐症候群も考えられます。これは、周期的に発作的な嘔吐を繰り返す疾患で、中学年ぐらいまで続くこともあります。
また、溶連菌やアデノウイルス感染による咽頭炎でも、喉の痛みから吐いてしまうこともあります。さらに、片頭痛によって嘔吐するケースもあります。
さらに思春期になった場合、過敏性腸症候群などの疾患や、自律神経調節性障害、起立性調節性障害といった自律神経系の異常で、吐いてしまうこともあります。

ウイルス性胃腸炎で嘔吐している場合の対応

薬を飲む子供ウイルス性の急性胃腸炎は、一般的に「お腹の風邪」と言われる状態です。抗菌薬が効かないので「安静」と「嘔吐・下痢による脱水状態を防ぐ水分補給」で治す必要があります。吐いた後は、2時間ほど飲食をしないで過ごしてください。その後に給水を始める際も、一気に飲ませずに、少しずつゆっくり飲ませてください。経口補水液を推奨したいのですが、水やお茶でも問題ありません。
嘔吐が何度も起きている場合は、薬物療法として制吐剤(せいとざい)の坐薬などをお出しします。「何度も嘔吐を繰り返して水分補給できない」「顔色が悪い」「ぐったりしている」「血便を伴っている」「おしっこが長時間出てこない」といった場合は、速やかに医療機関を受診してください。
また、吐いたものにはウイルスが混ざっているため、誤った処置を行うと、周りへうつしてしまう恐れがあります。必ずビニール手袋をはめてから清掃し、消毒してください。清掃後も、きちんと手を洗いましょう。

夜間や休日に嘔吐した時のお家での対処のポイント

ぐったりしている子ども吐いた直後は水分を飲ませないでください。
1~2時間様子を見て、吐かないことを確認してから、常温の水分を一口ずつ補給させましょう(目安10~15ml)。飲み始めは白湯にすることをお勧めします。また子供用のイオン水や経口補水液でも問題ありません。
少しずつ水分量を増やし、水分を摂らせても嘔吐しないことが確認できましたら、消化の良いものを与えましょう。水分摂取できない場合、固形物は与えないでください。
翌日、当院へ受診してください。「何度も吐く」「おしっこの量が減っている」「ぐったりしている」などの様子を見られたら#7119をかけて相談していただくか、救急病院へ受診してください。

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