発作を起こさせない、ゼロレベルへ持っていくことを目指します。
薬剤治療の進歩で、見た目の喘息は軽症化しました。
急に起こった発作で深夜に救急外来を頻繁に訪れることも、ましてや緊急入院になるお子さんも激減しました。
でも、意外や「軽い喘息持ち」状態から脱せないお子さんが多いことも確かです。
喘息治療とは、起こった発作を治すことではなくて、喘息発作を起こらなくすることが治療のゴールなのです。
このままでは、喘息を大人になっても治し切れない人が増えてしまうのではないか、ちょっと心配です。
気管支喘息のメカニズム
まず、喘息は一時的な急性の発作にしか見えませんが、発作の出ていない時もじわじわと病気が進行していく慢性の炎症だということが大切です。
肺の中の空気の通り道、気道を取り囲む筋肉が収縮して細くなり、また気道の内側の粘膜が腫れ、その粘膜から痰が出てくる。
それにより激しい咳や呼吸困難になることを「喘息発作」と呼びますが、それは喘息の見た目の一面に過ぎません。
- 肺の中の空気の通り道、気道を取り囲む筋肉が収縮して細くなる
- 気道の内側の粘膜が腫れる
- 腫れた粘膜から痰が出ている
気管支喘息の原因とは
小児の喘息の場合は、最大の原因はアレルギーです。
遺伝的な素因を持つお子様に多く、いろいろなアレルゲンを原因として、気管支に慢性のアレルギー性の炎症が起こって、気管支が過敏な状態になります。
そこに、花粉、カビ、動物の毛、受動喫煙を含む汚染された空気を吸入したり、感染症(カゼ)や気圧、湿度、温度の変動、など様々な要因が複雑に合わさって発作が起こると考えられます。
気管支喘息かなと思う症状
呼吸がヒューヒュー、ゼーゼーと苦しくなり、激しく咳き込むことを繰り返します。
特に息を吸う時より、吐く時に苦しいのが特徴です。
1日の中では真夜中、明け方に多い傾向が見られ、時期としてゴールデンウイーク〜梅雨明け、台風シーズン〜秋雨の頃など、季節の変わり目に多く見られるのが特徴です。
昼間などはケロッと元気にしていることもあり、普通の生活が送れていたのに、夜中にあまりに呼吸が苦しそうな場合は早めの受診をお勧めします。
気管支喘息の治療法
喘息の治療は、以下の2つの治療に分けられます。
- 起こってしまった発作の治療(発作治療薬)
- 喘息発作を起こりにくくするための長期管理(長期管理薬)
今起こっている発作の治療(これは喘息治療の、ほんの一部)
飲み薬や吸入薬などの気管支を取り巻く筋肉の収縮を緩めるβ気管支拡張剤と言われるものを使います。
それにもあまり反応がない場合は、ステロイド剤の飲み薬、点滴などを行うこともあります。
(発作時のステロイド剤使用の敷居が低くなったことと、安易に吸入器を貸し出して自宅で緊急回避的な吸入治療することが、本来の喘息治療をおろそかにしがちになるという弊害に繋がりましたが。)
発作を起こしにくくする治療
ここからが、本来の喘息治療の大事な部分になります。
治療目的の半分は、いわゆる小児期の喘息持ち状態から早く脱すること!
もう半分は、大人に喘息を持ちこまいようにすること!
口さがない昔の小児科医は言いました。
喘息なんて、水泳して、乾布摩擦でもしてれば、15歳になれば治るから、だれでも治せる病気。
15歳で落ち着く傾向にあることは確かですが、15歳までに気合で直したつもりが、大人になって難治性喘息になってしまったことを、その小児科医は知りません、小児科医は15歳までしか診ないのですから。
さあて、大人に喘息を持ち込まないためには、積極的に気管支の慢性炎症をコントロールする必要があります。 その方法が「ゼロレベル作戦」(日本名) 「アーリー・インターベンション」(海外では早期介入)です。 必要最低限の薬剤で喘息無症状状態を、しっかり維持して気道過敏性を封じ込めるやり方です。
発作が起こったら治療、起こったら治療の繰り返しが多くなった一つの原因として、先述した、ステロイド経口薬の敷居が低くなったことが挙げられます。
ステロイド経口薬が良く効くので喘息を見失いがちになる傾向があることを指摘しておきたいと思います。
もう一つの落とし穴がβ刺激薬の貼り薬ですが、その誤用の典型が、貼り薬の単独処方です。
喘息のお子様を持つご両親様へのメッセージ
喘息は慢性炎症です。小児呼吸器科医が診るべき病気です。
ステロイド剤で発作が治ると子供はケロッとしているので、「喉元過ぎればただの元気」に見えるので、お母さんも安心してしまいがちです。
発作が起こるたびに発作だけを治すのではなく、ゴールは「喘息発作ゼロ」です。
喘息は日々変わっていくので、頻回なフォローアップで、ちょっとした変化を見極めて丁寧な管理をして、発作を起こさせない、ゼロレべルへ持っていくことを目指します。
コントロールしていく治療は、お母さんがたの根気が必要です。大人にまで喘息を持ち越さないためにも、お子さんの健康管理を一緒にきめ細やかに進めていきましょう。