アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎って何でしょう?

アトピー性皮膚炎って何でしょう?漠然としていて分かりにくい診断名です。ある病院では「乾燥性皮膚炎」といわれ、
次の病院では「軽いアトピー性皮膚炎」といわれ、混乱を招くことが多いのですが、実は『軽快、悪化を繰り返す強いかゆみをを伴う湿疹でアレルギー家系、または本人がアレルギー体質であること』という約束で診断名が付くことが多いのです。
海外からご帰国の方は経験があるかもしれませんが、欧米の家庭医は「アトピー性皮膚炎」という診断名を使わない傾向にあるようです。単純に「eczema」(湿疹)と呼ぶことが多く
あえてアレルギーと関連付けないようにして、アトピービジネスや民間療法の罠に嵌らないようにしているようです。「乳児湿疹」と「アトピー性皮膚炎」の境界は明確ではありません。


かゆい炎症は、なぜ起こるのでしょうか

  1. 皮膚のバリアの不足

  2. アレルギー性の炎症
  3. 感染(細菌、ウイルス、真菌症など)
  4. 痒みで引っ掻く

アトピー性皮膚炎は生まれつきの素因として皮脂成分の不足があることと、免疫システムの過剰な反応が起こることをきっかけに発症します。一度、炎症が起こってしまうと、炎症がバリアをさらに壊し、バリアが壊れると炎症が強くなるという悪循環が始まります。
さらにそれに加えて痒いと引っ掻く、引っ掻くと炎症が強くなるという悪循環も加わり悪化の一途をたどることになります。

アトピー性皮膚炎の治療法

アトピー性皮膚炎の治療方法

前述の悪循環が丁寧なスキンケアだけで改善し自然治癒に向かうこともありますが、決して高い確率ではありません。

早期治療の重症性

乳児湿疹→アトピー性皮膚炎→食物アレルギー→小児喘息→花粉症
アレルギー疾患が順番にやってくることを『アレルギーマーチ』と呼びます。このアレルギーマーチの最初のイントロが乳児期の皮膚の荒れから起こる「経皮感作」だということが科学的に証明されました。
乳児期に皮膚のコンディションの管理が、将来のアレルギー体質の運命を決定すると言ってもいいでしょう。
さらに慢性の炎症を繰り返しているうちに皮膚の内部構造まで失われてしまうと治療が困難になってしまいます。

ステロイド剤の落とし穴

ステロイド剤と聞くと何となく怖いと感じられる方も多いかもしれませんが、ホルモン剤としての副作用の心配はほとんどありません。ただいい加減な使い方を繰り返してステロイド依存状態になってしまうことがあるので、怖い薬とも言えます。

ステロイド剤を使う上での大事な約束

  1. 塗る日数が確実に減っていること
  2. 塗らない日が確実に増えていること
  3. 塗る場所が確実に減っていること

先の展望が見えていることが大事です。塗れば良くなるけど、やめたら元に戻る、、このくりかえしがダラダラ続くとステロイド依存症なってしまいます。

強いステロイドと弱いステロイド

海外からお戻りの患者様は、たいがいとても強いステロイド剤をお持ち帰りになります。さて弱いステロイド軟膏を10日間塗るのと、それよりも5倍強い軟膏を2日間塗るのを比べると、ステロイドの量は同じですが、どちらが良いでしょうか。
雑草取りをイメージしていただくと理解しやすいのですが、実は弱いステロイドがいい加減な「草刈り」、強いステロイドがしっかり根っこまで抜く「草むしり」に当たります。
もちろん強すぎるステロイドを使う必要はありませんが、弱いステロイドを頻回に塗り続けるのは安全とは言えないのです。

酷いところに塗ってください!は誤り

わざわざ酷くしてから塗るのか、軽いうちに塗るのか?前述の草むしりを想像していただければ答えは明確です。
草むしりをしても、完全なバリアが出来なければ当然また雑草が生えてきます。
草ぼうぼうになる前、まだ少ないうちに塗ったほうが、当然、ステロイドを塗る量も少なく済みますし、皮膚のバリアのダメージも少なく済むのです。

最新治療・新しいステロイド以外の抗アレルギー抗炎症剤の登場

とうぜん、ステロイド依存、ステロイド副作用を完全に回避することが出来ます。

コレクチム軟膏

2021年から使用が開始され、2023年2月から生後6か月からの使用が可能になりました。
抗炎症作用の強さはクラスⅢ程度かあるいは、その少し下。もちろん合う合わないはあるかもしれませんが、とても効果的で使い心地の良いお薬です。

モイゼルト軟膏

2022年から使用が開始され、2023年12月から生後3か月から使用が可能になりました。抗炎症作用の強さはコレクチムと同じです。

コレクチムとモイゼルトのどちらを選択するべきかの明確な基準は未だ示されていませんが、どちらの薬剤も効果的で間違いなくステロイドの使用量、使用期間の短縮に役立つものです。また今まで“脱ステロイド治療”をセールスポイントにする怪しいアトピービジネスに依存する必要がなくなることも朗報と言えるでしょう。
現在の使い方としては、強い炎症については皮膚が良好な状態になるまではステロイド軟膏を使用し、減量を試みたところでコントローラーとしてステロイドから新薬に変更していくという戦略になります。

ご両親へのメッセージ

赤ちゃんアトピー性皮膚炎の治療は、炎症を鎮めることと日々のスキンケアーが基本です。
当院ではご両親任せにしないステロイドの管理で、塗る場所、塗る量まで細かくお教えしています。皮膚はとても繊細な臓器です。
しっかりした触り心地の良いつるっとして皮膚のバリアが出来上がるまで、しっかり治しましょう。バリアが出来上がってしまえば、再発は極めて稀です。
初診の方には十分な説明時間を用意いたしますので、ぜひご相談ください。

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